こんにちは。
有機化学で「せっけん(界面活性剤)」の学習をした際、そのしくみは理解したものの「なぜ親水基は親水性があり、親油基は親油性があるのか」ということは考えていませんでした。
最近理論化学で分子の極性を学習して、そういうことか!と理解することができましたので、分子の極性と界面活性剤の関係についてまとめます。
せっけん(界面活性剤)のしくみ
せっけんは以下のような構造をしています。

親油基と親水基を両方持つことで水にも油にもなじむので、油性の汚れなどを水で流すことができます。 (このように油分と水分を均一に混合させる働きをするものの総称が界面活性剤です。)
ではなぜ親水基(COONa)は親水性があり、親油基(CH3CH3CH2…)は親油性があるかというと、親水基は極性(イオン基)であり、親油基は無極性だからです。
分子の極性
電荷の偏り
分子の極性とは、分子の中の電荷の偏りです。
電気的に中性な1つの分子の中で、全体で見て電荷がわずかに+に偏っている(δ+)部分とわずかに-に偏っている(δ-)部分がある場合、極性分子である(分極している)といいます。
逆に電荷の偏りがない分子は無極性分子です。
極性は電気陰性度で決まる
分子の極性は電気陰性度によって決まります。
電気陰性度は、分子の中の原子が電子を自分の方へ引っ張る力です。

イオン化エネルギーと同様に、電気陰性度の大きさは原子の陽子数と原子半径に影響されるため、全体的に周期表の右上にいくほど強くなる傾向があります。
電気陰性度が大きい代表的な元素はF,O,N,Clです。すべて周期表の右上ですね。

(a)は無極性分子(電気陰性度差なし)、(b)は極性分子(電気陰性度差あり)です。さらに電気陰性度差が大きくなると(c)のイオン結合になります。
たとえば(b)の塩化水素HClの場合、電気陰性度はHが2.20でClが3.16と、Clの方が大きいです。
電気陰性度が大きいClは自分の方へ強く電子を引っ張るので、HCl分子の中の電子がClの方へ偏ります。その結果、H側がδ+、Cl側がδ-となります。
HClは直線形でわかりやすいですが、立体的な形の分子でも分極します。
たとえば前回の記事でみた水やアンモニアは、電気陰性度の大きいO,Nが電気陰性度の小さいHの方から電子を引っ張って分極しています。
このように、分子をつくる原子に電気陰性度の差がある場合、極性分子になることが多いです。
しかし、水やアンモニアと同じ正四面体形のメタンは無極性です。
CとHの間ではわずかに電荷の偏りがあるのですが、正四面体の頂点に1つずつHが配置されて、電子の偏りが分子全体としては打ち消されているためです。
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極性同士・無極性同士は集まる
分子には極性のものと無極性のものがあることがわかりました。
この極性の有無によって、溶媒への溶けやすさが決まります。
具体的には、極性のものは極性溶媒に溶けやすく、無極性のものは無極性溶媒に溶けやすいです。
極性分子はδ+とδ-があるので、極性分子同士がクーロン力で引き合います。
つまり溶質と溶媒が混ざり合ってそれぞれに引き合うので、溶けている状態になります。
また、無極性分子は分子間の結合が弱いため、溶質と溶媒がお互い簡単に分子間に入り込み、溶けている状態になります。
しかし、溶質と溶媒の一方が極性でもう一方が無極性の場合、極性のもの同士がクーロン力で集まってしまうので、混ざり合わず溶けにくいです。
分子の世界でも似た者同士は集まるということですね。
界面活性剤と分子の極性
界面活性剤に戻ります。 水は極性分子ですが、汚れは(ほぼ)無極性の油性のものが多いです。
界面活性剤を水に入れると、上で見たとおり、極性同士、つまり親水基(イオン化)と水が集まります。
のけ者にされた親油基は水を避けて油性の汚れとくっつきます。
この結果、親水基を外側にして親油基が汚れを取り囲み、丸い輪のようになります。これをミセルといいます。

このようにしてせっけん(界面活性剤)を使うことで汚れが取れるのですね。
まとめ
有機化学・無機化学・理論科学と分かれていますが、この区別は便宜的なもので、すべてつながっていますね。
界面活性剤は表面張力も関わっているようです。これは物理になるんでしょうか。色々な角度から事象をとらえられるよう学習を進めていきます。
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