こんにちは。
「界面活性剤 疎水性 親水性」をgoogle patentで検索して1ページ目にヒットした特許を読んでみましたので、そのうち2件を発明原理を意識してまとめます。
前提となる知識
界面活性剤の種類
界面活性剤には大きく分けてアニオン界面活性剤・カチオン界面活性剤・両性界面活性剤・ノニオン界面活性剤の4種類があります。
それぞれ、水になじみやすい親水基が水に溶けたときにアニオン(陰イオン)、カチオン(陽イオン)、両性イオンになるもの、またイオンにならない(ノニオン)で極性によって溶けるものであることからこれらの名前がついています。
種類によって性質や用途が変わってくるので、こちらのサイトを参考にどのタイプの界面活性剤が記載されているか確認しながら明細書を読みました。

大雑把な見分け方としては、「~酸塩」はアニオン界面活性剤、「アンモニウムイオンN+とハロゲン」はカチオン界面活性剤、「両性イオン(ベタイン・アミノ酸・アミンオキシド)」は両性界面活性剤、「エステル・エーテル」はノニオン界面活性剤のようです。
一件目 JP2008190091A
発明の内容
発明の名称:布帛の親水化処理方法
課題:カチオン界面活性剤を基剤とする柔軟仕上げ剤処理に起因する親水性の低下を防止する
解決手段:SO2基または亜硫酸をもつカチオン界面活性剤
発明原理:先取り反作用
カチオン界面活性剤は、繊維や毛髪などのマイナス(-)に帯電している固体表面に吸着し、柔軟性、帯電防止性、殺菌性などを付与する作用があります。
-のところに+がくっつくので、極性が失われ親水性が下がります。
親水性を失うのを防ぐために、極性分子であるSO2基または亜硫酸を導入していると考えられます。
疑問点:なぜSO2基または亜硫酸?
極性を付与する手段としてなぜSO2基または亜硫酸を選んだのか?を知るために二酸化硫黄について調べてみたのですが、
・刺激臭を有する気体。
・きちんとした処理を行わない排出ガスは大気汚染や環境問題の一因となる。
など、あまりいいイメージがなく(というか有害では?)、あえてSO2基または亜硫酸が選ばれた理由がわかりませんでした。
今後の課題としておきます。
二件目 JP2008045077A
発明の内容
発明の名称:合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法
課題:合成樹脂成形品表面に界面活性剤を塗布して親水性を付与する際の熱による変質、塗布の不均一性
解決手段:超臨界二酸化炭素による接触処理
発明原理:均質性、パラメーターの変更
多くの合成樹脂は疎水性で帯電しやすい(極性が小さい)ですが、表面の親水性が不可欠な製品、たとえばビニールハウスや食品用ラップなどは、原料となる合成樹脂に界面活性剤が練り込まれます。
極性が小さいため均一に塗布でき、かつ31.7℃以上という比較的低い温度で処理できる超臨界二酸化炭素を選んだことが新しいと考えられます。
界面活性剤の例には同じく極性が小さいノニオン界面活性剤が挙げられていました。
超臨界とは、下記状態図の一番右上の状態です。

気体と液体の区別がつかない状態といわれ、気体の拡散性と、液体の溶解性を持ちます。すべての物質は圧力と温度を上げていくと超臨界状態になるそうです。
ちなみに超臨界二酸化炭素はコーヒーのカフェイン除去などにも使われています。(クロマトグラフィなどの分離技術にも通じそうですね。)
まとめ
界面活性剤が親水基・疎水基(極性・無極性)の両方を持つという性質を利用し、疎水性のものに親水性を付与するために使われていることがわかりました。
また、特許を読みながら調べる中で、界面活性剤は洗浄や乳化だけでなく、柔軟化・起泡・消泡・帯電防止・殺菌…などなどにも使われていることを知りました。工夫次第でさまざまな効果を出せるんですね~。
明細書の読み方に関しては、発明をすべて理解しようとするのではなく、まずは「この発明のコアはどれにあてはまるか?」を意識して読むことでスピーディに特許を読んでいくことができそうです。
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