スーパーでよく見るドライアイス。ドライアイスは「昇華」するので、氷のように食品や袋を濡らさずに冷たさを保つことができます。
しかしなぜ、液体をすっ飛ばして気体になってしまうのか?ちょっと不思議ですね。
宇宙食を作るのにも利用されている「昇華」のしくみについてまとめました。
昇華のしくみ
昇華が起こる理由を一言でいうと、「分子同士の結びつきが弱いから」です。
では、なぜ分子同士の結びつきが弱いと昇華が起こるのかを詳しく見ていきます。
昇華とは?

昇華とは、固体から直接気体になること(または気体から固体になること)です。
図のように、
固体は分子同士が結合して固定された状態。
液体は部分的に結合が切れた状態。
気体は完全に結合が切れて、自由に飛び回っている状態です。
分子同士の結合を切るにはエネルギーが必要です。
氷が水になって水蒸気になるには、加熱による熱エネルギーで結合を一つずつ切っていく必要があります。
リレーでバトンを渡された人から走り出すような感じです。
それに対し昇華とは、分子同士の結合が一気に切れて、分子が一斉に動き出す状態。
マラソンの一斉スタートのような感じです。
これは、結合を切るのに必要なエネルギーがとても小さい、つまり分子同士の結びつきがとても弱いから起こるのです。
化学結合の強さ
化学結合には大きく分けて4種類(イオン結合・共有結合・金属結合・分子間力)あります。
このうち、共有結合・イオン結合・金属結合は強い結合、分子間力は弱い結合です。
グラフにすると以下のようになります。
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左からイオン結合・共有結合・金属結合・分子間力です。

見えますか?そうです、右下のD,E,F,G,Hが分子間力です。めっちゃ弱いですね。
この弱い分子間力の中にもさらに分類があり、代表的なものは水素結合とファンデルワールス力です。
水素結合の強さはファンデルワールス力の約100倍です。
水分子同士は「水素結合」で結びついています。加熱すれば簡単に状態変化しますが、昇華するほど弱い結合ではありません。
対してドライアイス(二酸化炭素)は分子同士が一番弱い「ファンデルワールス力」で結びついているので、昇華性を持ちます。
分子結晶と昇華性
分子間力で結びついた結晶を「分子結晶」といいますが、分子結晶に昇華性を持つものが多いのは、分子間力が弱い結合だからですね。ドライアイスも分子結晶です。
水を昇華させるには
圧力と昇華
実は、条件を整えることで水も昇華させることができます。
多くの物質は、周りの圧力が下がると粒子を抑える力が弱くなるため、分子同士の結びつきを切るのに必要なエネルギーが小さくなり、沸点が下がります。
山の上だと100℃よりも低い温度でお湯が沸くのはこのためです。
さらに圧力が下がると、やがて融点と沸点が同じ温度になります。こうなると物質は、固体の状態か液体を経ずにいきなり気体になります。つまり昇華が起こるのです。

上は温度と圧力による水の状態を表した図(状態図)です。
圧力が下がるにつれ沸点が下がり、やがて融点と一緒になることがわかります。
三重点より圧力が低いと、水は昇華するのです。
宇宙食の作り方
この性質を利用した技術が、宇宙食やカップラーメンにも使われる「フリーズドライ」です。
食品を凍らせてから減圧し、水を「昇華」させることで、低温のまま乾燥します。食品の中の水分が入っていた空間が収縮せずに残るため、味や栄養分の変化を最小限に抑え、軽く、長い間保存できるのです。

6歳のときスミソニアン航空宇宙博物館でアイスやイチゴの宇宙食を買って食べましたが、甘味が凝縮されて何とも言えないおいしさでした。こんな風に作られていたんですね~。
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