P&Gシリコーンエラストマー特許に関する疑問点(5)(6)(7)

特許明細書を読む

こんにちは。
前回の記事に引き続き、P&Gシリコーンエラストマー特許に関する疑問点と、管理人様の回答を踏まえて学び・反省点と今後の対策をまとめます。

質問5

【0042】
水溶性着色剤には、水分散性の物質が含まれている。
例えば、レーキは、固体希釈剤によって拡大若しくは縮小する(←誤訳:(正)増量若しくは希釈した)顔料か、又は水溶性染料を吸収力のある表面(通常はアルミニウム水和物)に沈着させることで生成される有機顔料のいずれかである。
可溶性染料をアルミニウム水和物の表面に沈着させて染色無機顔料を生成するか、単に基材の存在下で沈着させるかについては、不確実な場合もある。
酸性染料又は塩基性染料を不溶性の塩に沈着させてレーキを生成することもある。
本明細書ではカルシウムレーキ及びバリウムレーキも使用される。
無膜無機着色剤も、好適な水溶性着色剤である。

【疑問点】
可溶性染料をアルミニウム水和物の表面に沈着させて染色無機顔料を生成するか、
単に基材の存在下で沈着させるかについては、不確実な場合もある。
There is uncertainty in some instances as to
whether the soluble dye precipitates on the surface of the aluminum hydrate to yield a dyed inorganic pigment or
whether it merely precipitates in the presence of the substrate.
→無機物の表面を染料で染めて顔料として使うか、直接基材を染めるか、という意味でしょうか?

この場合基材とは何を指すのでしょうか?水溶性着色剤の話なので、直接染めるとなると水に溶かすということになるかと思いますが、in the presence of the substrateという言い方からそういう意味ではない気がします。

基材|基質 染料 で検索してみたところ、高分子やフィルムに染料層を形成するという文脈が多いようでした。高分子基質に色をつけて分散性着色剤とするという意味でしょうか?

回答

・該当箇所(文章・チャンク)をネットで検索し、同じような表現をしているものを読んでみる
→テキストでコピーし、EKWORDSに乗せて並べ替える
→「基材」の使われ方を調べる

・誤訳にはならないので、素直に訳す(あまりこだわらない)

質問6

(↑と同じ段落内)

酸性染料又は塩基性染料を不溶性の塩に沈着させてレーキを生成することもある。
A lake also forms from precipitation of an insoluble salt from an acid or basic dye.
→「酸性染料又は塩基性染料から得られる不溶性塩の沈殿でレーキを生成することもある。」ではないでしょうか?

回答

・質問には考えの軌跡、根拠を書くように。すると自分で整理でき、その過程で答えが出ることも多い。

・公開訳は誤訳だが、「不溶性塩の沈殿」も少し不明瞭なので、「不溶性の塩として沈殿させることで」が適切と思われる。
根拠↓
「水溶性の塩基性染料あるいは酸性染料を適当な方法で不溶性としたもので、レーキlakeという。水溶性染料の沈殿剤としては次のようなものがある。(コトバンク)」

質問7

(↑と同じ段落内)
無膜無機着色剤も、好適な水溶性着色剤である。
Uncoated inorganic colorants are also suitable aqueous compatible colorants.

【疑問点】
・一般的に無機の着色剤といえば無機顔料のようですが、顔料は水に不溶です。
→「無機着色剤」は顔料ではない(染料)?
→染料wikiより「真の鉱物染料と呼べるのは着色力をもつ可溶性の無機化合物であり、大島紬を染めるのに使う泥や過マンガン酸カリウム、コバルトの錯塩くらいである。」
→ここらへんのことを言っているのでしょうか?

・また、uncoatedの意味がわかりません。(着色剤が表面処理されていないという意味?)
「Uncoated inorganic colorant 無機」で検索してみましたが、それらしい語はヒットしませんでした。

回答

・Uncoatedでヒットしないならcoatedで検索、だめならcoatの意味を調べる
coat=被覆?
→「被覆 無機 着色剤」で検索 
→uncoated:被覆処理されていない~ (コーティングされていない)

・実ジョブは時間との勝負なので、裏取りできなくても誤訳にならない表現を選ぶ手もある
→時間無制限の勉強とは違うので、100点を追求しない

・aqueous compatibleは「水分散性」(相溶性のある、混合可能な)
→「水溶性」ではない

反省点と対策

・EKWordsを活用する
EKWordsは今まで全然活用できていませんでしたが、関連ビデオセミナーもチェックしてEKWordsを活用し効率化に取り組みます。

・100点を追求しない
「裏取りできなくても誤訳にならない表現」は、ある意味逃げでもありますが、限りある時間内で「クレームが来ないクオリティ」の訳文を作成し続けるためには必須のスキルなんですよね。
「全部ちゃんと理解しないと」と思っていたのですが、ある程度調べて分からない部分はひとまず「裏取りできなくても誤訳にならない表現」で訳す(時間があれば戻って推敲する)ようにします。

・用語の定義を正確に
"compatible"については、この明細書で最初に出てきたときに
「compatible:共存できる able to be used together without causing problems」
と秀丸に書き込んでいたのに、「水溶性」ではないことに気づいていませんでした(汗)。
なるほど…分散して混ざればよいので、水に不溶である顔料もaqueous compatibleになるのですね。単純なことなのに思いつきませんでした。やはり公開訳(水溶性)に引っ張られていたようです。

・質問には考えの軌跡、根拠をわかりやすく書く
ビデオで客観的に見ると、まとまりがなく不親切な質問をしてしまっていることがよくわかりました(申し訳ありません)。
自分では軌跡をちゃんと書くように意識したつもりでしたが、全然伝わってこないですね。
検索履歴や出典など順を追ってきちんと書くようにします。

まとめ

P&G明細書の対訳学習(ビデオ視聴+追加作業)がようやく終わりました。のべ約88時間でした。これから関連特許(花王・資生堂・富士フィルム)を読む予定です。

対訳学習開始直後のときはビデオの通り秀丸を編集していましたが、学習を進めるにつれ自分なりの編集方法や用語集登録の加減(チャンクの切り方)もわかってきて、よりスムーズに短時間で学習を進めることができました。

次は3Mフルオロポリマー特許の対訳学習を始めます。
引き続き頑張ります!

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