【文系女子が教える化学】これがすべての単位の源!SI基本単位をざっくり図解(2019新定義)

文系女子が教える化学

こんにちは。

物理や化学で出てくる単位は、ワット、ジュール、mol、クーロン、…とたくさんあって覚えるのが大変ですよね。
しかし実は物理量の単位というのは、元をたどればたった7つしかないというのはご存知でしょうか?
色でいうと「3原色」のように、この7つがあればその他すべての単位を作ることができるのです。すごいですよね!
そんな魔法のような7つの単位「SI基本単位」の非常に難解な定義を、一目でわかるようにわかりやすく図解してみました。

SI基本単位とは

SI基本単位は、国際単位系(SI)において基本単位として位置付けられている以下の7つです。

長さ:メートル
質量:キログラム
時間:秒
電流:アンペア
温度:ケルビン
物質量:モル
光度:カンデラ

定義は以下の通りです。

出典:Wikipedia

…意味が分からない!!

と思った方、安心してください。図解してますよ。
それでは一つずつ見ていきましょう。

長さ:メートル

定義:真空中で1秒間の299792458 分の1の時間に光が進む行程の長さ

光はまっすぐ進み、かつ速さが一定なので、真空中で光が決まった長さの時間に進んだ距離を1mと定めています。比較的わかりやすい定義ですね。

「1秒間の299792458 分の1」と中途半端な時間なのは、以前の定義(地球のパリを通る北極点から赤道までの長さの1000万分の1)による長さに合わせるためです。

質量:キログラム

定義:プランク定数を6.62607015×10-34 ジュール秒とすることによって定まる質量
→言い換えると
「1 kgは、波長が1 mの光子1個を吸収すると、静止状態から速度が6.62607015×10-34 m/s増加する質量」

実はこれを理解するのが一番苦労しました。
そもそも、定義にプランク定数しか書いていなくて、「それによってどうキログラムが決まるのか」がわからないですよね。
プランク定数を使って質量を求めるにはいくつか方法があるようなのですが、一番わかりやすいと思われる上記言い換えについて説明します。

ドブロイ波長の考え方より
λ=h/mv の公式がなりたちます。
(λ=粒子の波長[m],h=プランク定数[Js],m=粒子の質量[kg],v=粒子の速度[m/s])

上記式を変形して
質量m=h/vλ

波長λ=1mとすると、
質量m=h/vλ=h/v・1=h/v

プランク定数hに6.62607015×10-34を代入して
質量m=h/v=6.62607015×10-34/v

質量m=1kgのとき
6.62607015×10-34/v=1
なので
v=6.62607015×10-34[m/s]

以上から、「1 kgは、波長が1 mの光子1個を吸収すると、静止状態から速度が6.62607015×10-34m/s増加する質量」という言い換えになります。

もちろん、公式にあてはまるなら波長λ、速度vを変えてもなりたちます。

もうちょっとわかりやすく定義できないのか…と思いますが、正確性を期すためには仕方ないんですかね。

ちなみにキログラム再定義のため、28シリコン(Si)濃縮単結晶のX線結晶密度法から直接決定できるアボガドロ数から求める方法と、ワットバランス法によるプランク定数から求める方法の二通りが採用されているそうです。
(定義そのものはプランク定数)
「キログラム 定義」などで検索すると出てくるシリコン結晶の話はプランク定数による定義とは別物ですのでご注意ください。

時間:秒

定義:セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍に等しい時間
→言い換えると
「セシウムの二つの基底状態のうち、F=4の原子がF=3になる際に放射する電磁波(マイクロ波)の周波数は9 192 631 770Hzであり、この電磁波が周波数回振動した時間が1秒」

今度は原子が出てきました。
原子には、その原子に特有ないくつかのエネルギー状態(エネルギー準位)があり、最もエネルギーの低い状態を基底状態、それ以外の状態を励起状態といいます。
上の図はエネルギー準位を高さで表したものです。

原子内の電子は、電磁波を吸収することによってエネルギーを手に入れ、より高いエネルギー準位へ移動します。
一方、エネルギー準位の低い方へ原子が移動する時は、電磁波を放射することによってエネルギーを外に出しています。
エネルギー準位が変わる事を「遷移」といいます。

セシウムには基底状態が2つ(F=3とF=4)あり、この間の遷移で放射または吸収される電磁波の周波数が9 192 631 770Hzなのです。
周波数は、交流・電波・光などが一秒間に何回向きを変えるかという数、つまり振動数なので、この電磁波が周波数回(9 192 631 770回)振動した時間が1秒ということになります。

電流:アンペア

定義:電気素量を1.602176634×10-19 クーロンとすることによって定まる電流
→言い換えると
「電気素量を正確に1.6021766208×10-19クーロンと定義すると、
1クーロンの値はは電子素量/1.6021766208×10-19と定義され、
毎秒1クーロンの電荷を流すような電流が1アンペアである。」

電気素量は陽子1個の電荷に等しい電気量です。
陽子と電子の電荷の絶対値は等しいので、電子1個の電荷符号を変えたものでもあります。
この電子素量が何クーロンかを定義することで1クーロンの値が固定され、アンペア=クーロン/秒がなりたつために1アンペアの値が固定されます。

クーロンによってアンペアが決まるのであれば、アンペアではなくクーロンがSI基本単位になるべきでは?と思いますが、実は以前の定義ではアンペアはクーロンによって決まるのではなく、独立して定義されていました。
アンペア=クーロン/秒なので、アンペアによってクーロンが定義されていたのですが、2019年の再定義で依存関係が逆転したそうです。
電子素量→クーロン→アンペアの順に値が決まるのはスムーズに理解できるので、変わってよかったかもしれませんね。

温度:ケルビン

定義:ボルツマン定数を1.380649×10-23 ジュール毎ケルビンとすることによって定まる温度
→言い換えると
「温度を測りたいものを構成する粒子の運動エネルギーが1.380649×10-23Jならば温度を1Kとする。」

ボルツマン定数は温度目盛を決めるためにある定数で、エネルギーの組立単位を用いて測る温度と、温度計の液体の膨張で測る温度目盛とを換算するそうです。

1.380649×10-23 ジュール毎ケルビンが定義されたので、ケルビンを1とするとエネルギーの単位であるジュールの値が1.380649×10-23、つまり温度を測りたいものを構成する粒子の運動エネルギーが1.380649×10-23Jとなります。

物質量:モル

定義:6.02214076×1023(アボガドロ定数)の要素粒子で構成された系の物質量

要素粒子(原子、分子、イオン、電子など)が6.02214076×1023個集まった集団を1モルといいます。
12個=1ダースのように、まとまった数を言い換えているのですね。

光度:カンデラ

定義:周波数540×1012 Hzの単色光の発光効率の数値を683と定めることによって設定される光度。
(以前の定義:周波数 540テラヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が 1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度)
※2019年に定義が改定されましたが、表現を変えただけで内容は変わっていません。

光の周波数・発光効率(最大)・方向を定めることで、その光源による光の強さを固定しています。
ちなみに1カンデラはだいたいろうそく1本くらいの明るさだそうです。

まとめ

SI基本単位をざっくり理解できたでしょうか?
「正確に定義する」って本当に大変なんだということが伝わってきますね。
7つの基本単位を理解すれば、他のすべての単位もより深く理解できるはずです。
ぜひ参考にしてみてくださいね。

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