電子軌道の話でたびたび出てくる「遮蔽効果」。
「遮蔽」=電子が原子核のクーロン力をさえぎる、というイメージはあっても、そのしくみや影響については理解があいまいでした。
遷移元素の一見不規則に見える電子配置を説明する1つのキーワードなので、理解を深めるために遮蔽効果のしくみとその影響をまとめました。
遮蔽効果とは?
遮蔽効果(Shielding effect)を図にすると以下のようになります。

図のように、遮蔽効果とは、
「異なる電子殻にある電子同士が反発することにより、
外側の電子が内側の電子からの反発=「外向きの力」を受ける形になり、
外側の電子が原子核に引っ張られる「内向きの力」が打ち消され、
外側の電子と原子核の間の引力が減少しているように見える効果」です。

冒頭で「電子が原子核のクーロン力をさえぎる」と書きましたが、クーロン力は +と+、-と-で反発する力(斥力)と、+と-で引き合う力(引力)の両方を指します。 つまり、上の図では紫と水色の矢印はどちらもクーロン力です。
遮蔽効果による影響
有効核電荷への影響
有効核電荷とは、最外殻電子(または着目する電子)が「感じる」原子核の+電荷のことです。
遮蔽効果によって打ち消されたあとに電子まで届いた+の強さですね。
有効核電荷を正確に測ることは難しいのですが、だいたいの値は以下の式で表されます。
有効核電荷 = 原子核中の陽子数 - 内殻電子の数
たとえば、陽子数(原子番号)が11のナトリウム原子のでは、
L殻の電子における有効核電荷は
陽子数11 - 内殻電子の数2 = 9
M殻(最外殻)の電子における有効核電荷は
陽子数11 - 内殻電子の数10 = 1
となります。

殻数が増えるにつれ、有効核電荷が急激に小さくなっていくことがわかります。
ポテンシャルエネルギーへの影響
遮蔽効果で有効核電荷が小さくなった外側の電子はエネルギーが下がりにくくなります。
なぜかというと、原子核から受ける引力が小さいので、他の電子との相互作用の影響を受けやすく、エネルギー的に不安定になってしまうためです。
エネルギー的に不安定=エネルギーが大きい(その状態を保つのに大きなエネルギーがいる)ということです。
強い力で引きつけられていると、ちょっと周りに押されてもびくともせず、ここから動かないぞ!という安定した状態になりますが、
弱い力で引きつけられているだけだと、ちょっと押されただけで飛ばされてしまう感じですね。
原子の性質への影響
上で見た通り、遮蔽効果の大きい最外殻電子は原子核から受ける引力が小さく不安定で、簡単に外に出ていく状態です。
その結果、外殻に比べて内殻の電子数が多い(遮蔽効果の大きい)金属元素の最外殻電子は自由電子として振る舞います。
これが電気伝導や金属光沢といった金属的な性質を特徴づけることになります。

遮蔽効果という切り口で原子を見ることにより、電子殻とエネルギーの関係が整理できました。
遮蔽効果は遷移元素の電子配置だけに関係があるのかと思っていましたが、そもそもなぜ外側の電子殻にある電子は不安定なのか?など、すべての原子に関わる重要な概念ですね。
参考:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%AE%E8%94%BD%E5%8A%B9%E6%9E%9C http://sekatsu-kagaku.sub.jp/ionizationenergy-and-electronaffinity.htm
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