こんにちは。
分子の形や性質について考えるときに「混成軌道」の理解は不可欠です。
講座を受講したてのときにwikipediaにカウンターパンチ(まったくわからない)を食らった混成軌道ですが、勉強を進めるにつれ、だいぶ理解できてきたのでまとめておきます。
(混成軌道の前提として、「電子配置」の理解が必要です。こちらのサイトがめっちゃわかりやすいです)
混成軌道の基本
混成軌道とは
混成軌道とは、異なる軌道(たとえばs軌道とp軌道)を混ぜ合わせて作った、新しい軌道です。
えっ??って感じですが、炭素Cを例にして考えます。
電子配置のルールに沿って考えると、炭素Cの電子配置は1s2 2s2 2p2です。

このとき、最外殻であるL殻の軌道は2s2 2p2で、上向きスピンと下向きスピンの電子が1つずつ入った2s軌道は満員なので、共有結合が作れない「非共有電子対」になります。
残る2p軌道は1つずつ(上向きスピン)しか電子が入っていない「不対電子」であり、ペアとなる(下向きスピン)電子が入れる空きがあるので、共有結合が作れます。
つまり、炭素Cの結合の手は2本ということになります。
しかし、実際にはメタンCH4、エタンCH3-CH3のように炭素Cの手は4本あり、4つ等価な共有結合を作れますね。
この矛盾を解決するのが混成軌道です。
最外殻の2s軌道と2p軌道3つ(電子の入っていない軌道も含む)を混ぜ合わせて新しい軌道(sp3混成軌道)を作り、できた軌道に2s2、2p2の合わせて4つある電子を1つずつ配置します。
その結果、等価な4本の手ができ、図のように正四面体構造になります。
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このように、原子が混成軌道を作る理由の1つは、不対電子を増やしてより多く結合し、安定化するためと考えられます。
異なる元素の混成軌道
メタンCH4、アンモニアNH3、水H2OのC、N、Oはすべてsp3混成軌道で、正四面体構造です。
非共有電子対が1つずつ増えていくので、結合している水素Hが1つずつ減っていくのですね。

水分子が正四面体形だったとはびっくりです。
このように、元素が変わっても、混成軌道は同じ形をとります。
p軌道だけでは共有結合が作れない
ここで、アンモニアの窒素Nの電子配置について考えます。
窒素Nの電子配置は1s2,2s2,2p3です。
この2s2,2p3が混ざってsp3軌道になります。
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お気づきでしょうか。
不対電子の数が変わっていません。
話が違いますね。
不対電子の数が変わらないのに、なぜわざわざ混成軌道を作るのでしょうか?
実は、p軌道だけでは共有結合が作れないのです。
さきほどの窒素Nの不対電子はすべてp軌道なので、共有結合を作るためにsp3混成軌道にする必要があるのですね。
sp2混成軌道・sp混成軌道
sp3混成軌道のほかに、sp2混成軌道・sp混成軌道があります。
s軌道+p軌道3つが混成したものがsp3混成軌道、
s軌道+p軌道2つが混成したものがsp2混成軌道、
s軌道+p軌道1つが混成したものがsp混成軌道です。
炭素Cのsp2混成軌道は以下のようになります。
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このクリオネのようになった炭素原子を横に2つ並べて、平面に伸びた3つのsp2混成軌道のうち1つずつと、上下の丸いp軌道(2px軌道)をそれぞれ結合したものがエチレンCH2=CH2の二重結合です。
このとき、sp2混成軌道同士の結合をσ結合、p軌道同士の結合をπ結合といいます。
二重結合の2つの手は等価ではなく、σ結合とπ結合が1つずつでできているのですね。
三重結合は2s軌道+p軌道1つを混成したsp混成軌道同士がσ結合を、残った2つのp軌道(2py・2pz)同士がそれぞれ垂直に交差するようにπ結合を作ります。

ちなみに窒素分子N2はsp混成軌道でアセチレンと同じ構造、酸素分子O2はsp2混成軌道でエチレンと同じ構造です。

混成した軌道の不対電子数=σ結合の数=結合する相手の数 となります。(共鳴構造は除きます)
前述のように、異なる元素でも軌道は同じ形を取るので、エタン、エチレン、アセチレンを基準に形を思い出すとスムーズです。
まとめ
最初はなんてややこしいんだ!と思った混成軌道ですが、慣れると意外と簡単?とも思えてきました。
共鳴構造はもっと複雑なので、より深い理解を目指します。
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