こんにちは。
講座を受講して2か月、今まで化学・物理の勉強を優先し、明細書をしっかり読むのは後回しにしていました。(特許を探しても読めそうなものがあまりなかったというのもあります)
しかし勉強が進むにつれ、自分の中で「今なら読めそう」な感覚が出てきたこともあり、そろそろ特許との接続を意識すべしと思い、簡単そうなものから読んでみることにしました。
書誌的事項
公開番号:WO2011/007510(再公表特許)
出願人:パナソニック株式会社
発明の名称:グラファイトシートおよびこれを用いた伝熱構造
用途:電子機器の放熱

パナソニックは「PGS(熱分解グラファイトシート)」に力を入れているようですが、今回の特許はシートの材質ではなく、形状を工夫したものでした。
グラファイトについて
グラファイトとは?

グラファイトは鉛筆の芯に使われる黒鉛のことです。
炭素からできた結晶で、図のように蜂の巣状の平面が縦に連なったような構造をしています。
平面では、炭素の結合に使える4つの電子のうち3つ(sp2混成軌道)で平面構造を作り、残った1つの電子が自由電子のように平面を動き回ります(π電子の非局在化)。
その平面同士が連なり、ファンデルワールス力で弱く引き合っています。とても変わった構造ですね。
その結果、強い結合と自由電子を持つ平面方向の熱伝導性は非常に大きいが、弱い結合である垂直方向の熱伝導性は小さいという「異方性」を持っています。
放熱にグラファイトを使うメリット
.jpg)
一般的な金属と比べても非常に大きい平面方向の熱伝導性を生かし、1)「熱を運ぶ」2)「熱を広げる」ために活用されています。
今回の特許ではは上記のうち、2)「はさんで熱を広げる」の使い方がされています。
発明の内容
従来の課題

グラファイトシート(画像では「PGS」)を半導体パッケージ(発熱体)とヒートシンク(放熱体)の間にはさみ、圧着して使用する際、発熱体にゆがみがあるため、ヒートシンクとの間に隙間ができ、熱がうまく伝わらない。
そのため、グラファイトシートの表面にグリスなど流動性の放熱部材を塗布して圧着することにより、隙間の空気層を少なくすることにより密着性を高めて熱を伝わりやすくすることが行われる。
その際、グラファイトシートに十分な凸凹がないので、圧着する際に流動性の放熱部材が押し出されてしまい、放熱の効率化ができない。また、押し出された放熱部材により製品が劣化することがある。

解決方法
上面・底面にある凹部と、その凹部を貫通する連結孔とを持つグラファイトシート
効果:放熱部材を逃がさない。また、この構造により効率的に放熱できる。

熱の伝わり方:放熱部材に伝わった熱は等方(方向によって違いがない)状に熱伝導し、真ん中の薄膜になっているグラファイトシートで一気に平面方向に熱伝導し、また放熱部材およびグラファイトシートでで放熱体まで熱伝導する。
このとき、放熱部材の熱伝導率ははグラファイトシートの垂直方向における熱伝導率より大きいので、垂直方向と平面方向で役割分担することで効率よく熱伝導できる。

まとめ

実質10ページほどの短い特許でしたが、読むのにほぼ半日かかってしまいました。
また、今回の発明のメインはシートの形状でしたが、PGSについても詳しく説明されていました。PGSはすでに実用化されているのでパナソニックのページに説明がありました(公知技術)が、特許翻訳時にはこれを自力で図に起こす必要があるんですね。
PGSの原料となる高分子についてはすでに岡野の化学で学習しましたが、学習内容と実用レベルの隔たりを埋めていかなければと感じました。
これからも特許を少しずつ読んでいきます。
コメント