【文系女子の物理基礎】摩擦力まとめ(物体の気持ちを考える)

文系女子の物理基礎

物理始めました!

2つの箱を引っぱる問題

こんにちは。
摩擦力の単元で、よくこんな問題がありますね。
(いきなり解かないので安心してください)

【問題】

粗い水平面に質量Mの物体Aが置かれ、その上に質量mの物体Bが置かれている。重力加速度の大きさをg、Aと水平面の動摩擦係数をμ1、AとBの間の動摩擦係数をμ2として、以下の問いに答えよ。
物体Bに水平右向きに大きさF'の力を加えて引っぱると、BはAの上をすべりながら、AとBは右向きに動き始めた。
物体A、物体Bの加速度の大きさはそれぞれいくらか。

え、片方だけ引っぱるの?もう一つはなんで動くの?と、摩擦・ベクトル嫌いは混乱してしまいがちです(高校時代の私のように)。
この記事では、上の問題が解けるように摩擦力に関する知識・考え方をまとめていきます。

摩擦力まとめ

摩擦力には静止摩擦力と動摩擦力の二種類がある

まず、一口に摩擦力といっても二種類あります。
たとえば重いダンボールを部屋まで押していくとき、最初はなかなか動かないけど動き始めるとスイーと移動できたという経験はありませんか?
このことからもわかるように、最大静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいです。

最大静止摩擦力>動摩擦力

この「最大」というのがポイント。
動摩擦力は外力・スピードに関わらず一定なのに対し、
静止摩擦力は外力とつり合います。つまり、押す(引っぱる)力を大きくするにつれ静止摩擦力は大きくなります。

摩擦力の推移をグラフにすると下のようになります。

出典:http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/p/mech/masatu/seisidou.html

静止摩擦力が0から外力に比例して大きくなっていき、動き出したところでパッと小さい値で一定になっていることがわかりますね。

ちなみになぜ摩擦力が二種類あるかは謎だそうです。

摩擦力の値

問題では「動摩擦係数」や「静止摩擦係数」が与えられます。
動摩擦力の値は以下のようになります。

動摩擦力=動摩擦係数μ×垂直抗力N

摩擦係数は「その面の粗さ」を表す値で、
この式は、動摩擦力は「面の粗さ」と「垂直抗力」に比例するということを表しています。

また、最大静止摩擦力の値は以下のようになります。

最大静止摩擦力=静止摩擦係数μ0×垂直抗力N

静止摩擦力は外力とつりあって変動するのでした。そのため、静止摩擦係数を用いた上の式で表せるのは「動き出す直前」の静止摩擦力、すなわち最大静止摩擦力のみです。
最大でない静止摩擦力に公式はありません。外力の大きさがそのまま静止摩擦力の大きさになります。

動摩擦力か静止摩擦力かの判断

動摩擦力と静止摩擦力のどちらであるかは「物体が動いているか止まっているか」ではなく、「面に対してすべっているか、一体になって動いているか」で判断します。

最初の問題を見ると、
「物体Bに水平右向きに大きさF'の力を加えて引っぱると、BはAの上をすべりながら、AとBは右向きに動き始めた。」とあります。
このときBがAから受ける摩擦力が動摩擦力か静止摩擦力のどちらかというと、当然「動摩擦力」ですよね。
しかしその理由は「Bが動いているから」ではありません。
BがAに対してすべっているから」です。

たとえば、この問題が
「物体Bに水平右向きに大きさF'の力を加えて引っぱると、AとBは一体となって右向きに動き始めた。」だったとすると、
このときBがAから受ける摩擦力は動摩擦力か静止摩擦力どちらでしょうか?

先ほどと同じくBは動いているので動摩擦力、と思いきやこれは「静止摩擦力」になります。
「一体となって」動いているので、BはAに対してすべっていないからですね。

このように、「面に対して」すべっていれば動摩擦力、一体になって動いていれば静止摩擦力と判断します。(意外と間違えやすいです!)

摩擦力の向き

摩擦力・ベクトルの向きを考えるときは、「一つの物体(の気持ち)だけに注目する」ことがとても大切です。ベクトル嫌いの9割はこれができていないと思います(高校時代の私のように)。

またまた最初の問題に戻ると、
BがAから受ける摩擦力」は左右どちら向きでしょうか?
ここでBの気持ちに注目して考えると、
Bはどんどん右に動こうとします。
しかしAは慣性の法則によりその場に留まろうとします。
つまり、BはAに対して相対的に右に動こうとします
そのため、摩擦力は自分の動きの逆の左向きにはたらきます。
(摩擦力は必ず自分の動きの逆方向です。念のため)

一方、「AがBから受ける摩擦力」は左右どちら向きでしょうか。
Aの気持ちに注目すると、
Bはどんどん右に動こうとします。
しかしAは慣性の法則によりその場に留まろうとします。
つまり、AはBに対して相対的に左に動こうとします
そのため、摩擦力は自分の動きの逆の右向きにはたらきます。

全体を見ると右に動いているので摩擦力は全部左向きなのかな?と思ってしまいそうですが、必ず「一つの物体だけ」に注目して考えます。
自分は相手に対してどちらに動いているか?を把握することで、摩擦力はその逆向きにはたらくことがわかります。

問題を解いてみる

さて、ここまで確認できたので、もう一度問題を見てみます。

【問題】
粗い水平面に質量Mの物体Aが置かれ、その上に質量mの物体Bが置かれている。重力加速度の大きさをg、Aと水平面の動摩擦係数をμ1、AとBの間の動摩擦係数をμ2として、以下の問いに答えよ。
物体Bに水平右向きに大きさF'の力を加えて引っぱると、BはAの上をすべりながら、AとBは右向きに動き始めた。
物体A、物体Bの加速度の大きさはそれぞれいくらか。

最初にわかっている情報を図示して整理します。このときも「一つの物体に注目する」ため、物体ごとにはたらく力を色分けしてみます。

(「力の図示」がそもそも不安な方はこちらのサイトがわかりやすいです)

Bの加速度

赤い矢印がBにはたらく力です。

Bに水平方向にはたらく力は
・右向きのF'
・左向きの摩擦力

の2つです。
摩擦力は摩擦係数×垂直抗力です。このときの摩擦係数はμ2、垂直抗力は重力と等しいmgなので、摩擦力はμ2mgになります。
また、先ほど見たように、BがAから受ける摩擦力は左向きでした。F'とは向きが逆なので打ち消し合って、Bにかかる力FはF'-μ2mgとなります。
運動方程式F=mα(力F=質量m×加速度α)より、
F'-μ2mg=mα
∴Bの加速度α=(F'-μ2mg)/m

Aの加速度

青い矢印がAにはたらく力です。

Aに水平方向にはたらく力は
・Bから受ける摩擦力(右向き)
・床から受ける摩擦力(左向き)

の2つです。

つまりAはBからの摩擦力によって(ひっかかって)右に動いているということになります。
Bから受ける摩擦力は先ほどと同じくμ2mg
床から受ける摩擦力はμ1N'です。
N'は床からの垂直抗力で、その値は(M+m)gです。
AとBが凸←こういう形の1つの物体だと考えると、垂直抗力はそれにかかる重力と同じ値になるのでわかりやすいです。
まとめると、Aに水平方向にはたらく力Fは
μ2mg-(M+m)g
です。

運動方程式F=mαに代入すると、
μ2mg-(M+m)g=Mα
∴Aの加速度α={μ2mg-(M+m)g}/M

となります。

まとめ

摩擦力の問題は力の向きや大きさに混乱してしまいがちですが、ルールを一つずつ確認していけば理解できますね。
自分も高校時代にはだいぶ苦しみましたが、学習をやり直してみて「積み重ねが大事」ということを再認識しました。
いきなり問題を解こうとせずに、基礎固めをしっかり頑張りましょう!

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