空飛ぶランタン
ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」で、無数のランタンが空を飛ぶ中でラプンツェルとフリンがお互いへの気持ちを伝え合うシーンはとてもロマンチックですよね!
あの「空飛ぶランタン」はタイのコムローイ祭りがモデルになっていると言われていて、映画の影響で大人気の観光スポットになったそうです。
しかしラプンツェルを観てからコムローイをググってみた人はこう思ったはずです。
「なんか大きい」と。

(映画の中のランタンは手のひらサイズ、大きめにみてもせいぜい1Lくらいの体積しかないもの。対してコムローイは写真のようにかなり大きいです)
なぜコムローイのランタンはラプンツェルみたいにかわいいサイズじゃないのか(余計なお世話)。そんなわけで、ランタンが空を飛ぶのに必要な条件について考えてみます。
浮力とは
ランタンや気球は浮力によって空を飛びます。
浮力とは、「流体の中に物体を入れたとき、
物体が押しのけた体積分の流体の重さ分の力で上に押す力」です。
初めて読んだときはえっ??てなると思いますが、まずはわかりやすく「水の浮力」を考えてみます。
たとえば水(流体)の中にビート板(物体)を沈めたとします。
すると「ビート板の体積分の水の重さ」の力で下から上へ押す力が発生します。これが浮力です。

同じ体積の流体と物体が「置き換わる」ことで、その部分に働いて(つりあって)いた上向きの力がそのまま物体にはたらくと考えるとわかりやすいと思います。
式で表すと、
浮力F=ρVg
ρ:流体(水)の密度 V:物体(ビート板)の体積 g:重力加速度 となります。
密度ρ(kg/m3)×体積V(m3)=質量(kg)なので、質量×重力加速度で重さの値になりますね。
上の式からもわかるように同じ物体に対する浮力の大きさを決定するのは流体の密度です。
流体の密度が大きい=体積当たりの重さが大きい=浮力が大きい ということになります。
また、ビート板が完全に水の中に入っているとすると、下向きにかかる力は「ビート板の重さ(重力)」ですよね。
「ビート板の重さ」と「ビート板の体積分の水の重さ」を比べると、明らかに水の方が重いです。
そのため、「ビート板の体積分の水の重さ」分の上向きの力、つまり浮力ががビート板の重さに勝ってビート板が水に浮きます。
ビート板の重さは、ビート板の密度をρ'とするとρ'Vgと表せるので、この場合は
ρVg>ρ'Vg (浮力>物体の重さ)
なので浮く、ということになります。
逆に、物体の方が同じ体積の水より重いようなもの(たとえばカナヅチ)だと、浮力に重力が勝って物体は沈みます。
また、液体だけでなく気体(空気)にも浮力は存在します。
たとえばヘリウム風船は、ヘリウムの密度が空気より十分小さいので、
風船にかかる重力よりも空気の浮力が大きくなって浮くのですね。
ランタンが飛ぶ条件
さて、いよいよランタンが飛ぶ条件について考えます。
ランタンがどうやって飛んでいるのかというと、
火を灯して温めることでランタン内の空気の密度を小さくし、
ランタンの重さを浮力より小さくすることによって飛んでいます。
(高温の空気は気体分子の運動が激しいので気体分子が周りに逃げて密度が小さくなります)
熱気球も同じしくみですね。
ただ、物体を水に沈めるときは物体そのものの重さだけを考えればよかったですが、ランタンではランタン内の空気だけでなくランタン本体の重さも考える必要がありますね。
つまり、ランタンが浮く条件は
浮力>( ランタン本体の重さ+ランタン内の空気の重さ) となります。
式で表すと
ρVg>mg+ρ'Vg
ρ:空気の密度 V:ランタンの体積 g:重力加速度
m:ランタン本体の質量 ρ':ランタン内の空気の密度 です。
この式の両辺をgで割ると
ρV>m+ρ'V
∴ρ-ρ’>m/V
つまり、周りの空気とランタン内の空気の密度差が、ランタン自体の質量を体積で割ったものより大きければ浮くということになります。
具体的に試算してみると、
外気温10℃ 1.25kg/m3
球皮内80℃ 1.00kg/m3
体積約1Lとすると、
1m3 = 1000Lなので、1L=1/1000m3
ρ-ρ’=1.25-1.00=0.25>1000m/1
∴0.25g>m
すなわちランタンの質量が0.25gより小さければ飛ぶ。
…無理ですね!
つまり、ラプンツェルのランタンをあの体積で飛ばすのは難しいことがわかります。
(浮力はρVgなので、ランタンの体積に比例して浮力も大きくなります。)
コムローイ祭りのランタンの大きさには浮力を大きくするという意味があったんですね!
まとめ
普段意識していない「空気の浮力」でランタンや気球を飛ばすことができるのは面白いですよね。よかったら身の回りの浮力について考える参考にしてみてください。
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